付録B

年表

更新:2026年9月

AIの歴史を位置づけるための主な節目を挙げる。直近の日付(2025-2026年)は、2026年9月末時点で判明している状況を反映している。

  • 1950年:アラン・チューリングが「イミテーション・ゲーム」(チューリングテスト)を提唱する。(1)
  • 1956年:ダートマス会議により「人工知能」という研究分野が創設される。(1)
  • 1961年:世界初の産業用ロボットアームであるUnimateが稼働を開始する。(13)
  • 1980年代:フリーソフトウェア運動が興隆する(Free Software Foundation、1985年)。(9)
  • 1997年:Deep Blue(IBM)がチェスの世界王者ガルリ・カスパロフを破る。(1)
  • 2012年:AlexNetがディープラーニング(深層学習)革命の引き金を引く。(2)
  • 2016年:AlphaGo(DeepMind)が囲碁のトップ棋士を破る。(1)
  • 2017年:論文「Attention Is All You Need」が発表され、Transformerが誕生する。(3)
  • 2018年:最初の大規模事前学習モデル(BERT、GPT-1)が登場する。(4)
  • 2020年:GPT-3がスケールアップの威力を実証する。(4)
  • 2022年:ChatGPTが公開され、画像生成モデル(拡散モデル)が急速に普及する。(4, 5)
  • 2023年3月:公開書簡「Pause Giant AI Experiments」(Future of Life Institute)が発表され、3万人を超える署名を集めて、最も強力なモデルの学習を6か月間停止するよう求める。しかし、モラトリアムは実現しない。(24)
  • 2023年:GPT-4が登場する。オープンウェイトのモデル(Llama、Mistral)が相次いで公開される。AIがもたらす存亡リスクに関する公開声明が出される。(4, 24)
  • 2023年11月:第1回AI安全サミットがブレッチリー・パーク(英国)で開催され、続いてソウル(2024年5月)でも開かれる。(25)
  • 2023年末:マーク・アンドリーセンの「Techno-Optimist Manifesto」が公表される。Forbes誌が、効果的加速主義(e/acc)の旗振り役であるアカウント「Beff Jezos」の正体は起業家のギヨーム・ヴェルドンであると報じる。(7, 24)
  • 2024年:AlphaFold 3が発表され、AlphaFoldにノーベル賞が授与される。オープンソースAIの定義(OSI)が策定される。欧州AI規則が発効する。(14, 9, 25)
  • 2024年9月:欧州評議会のAI枠組条約が署名のために開放される。この分野で法的拘束力を持つ初の国際条約である。(25)
  • 2025年初頭:「DeepSeekショック」(中国発の最先端オープンモデル)が起こる。推論モデルが広く普及する。Stargate計画が発表される。(9, 4, 8)
  • 2025年1月:論文「Gradual Disempowerment」が発表され、暴力的な支配権奪取を伴わずに人類が徐々に主体性を失っていくリスクが定式化される。(25)
  • 2025年2月:パリでAIアクションサミットが開催され(フランスとインドの共同議長)、「リスク」から「行動」への重心の移動を印象づける。(25)
  • 2025年3月:OpenAIの新しい画像生成機能が公開され、「ジブリ風」画像が爆発的に拡散し、同意なき学習とアーティストの尊重をめぐる議論が再燃する。(16)
  • 2025年3月:Cortical LabsがCL1を発表する。培養したヒトのニューロンとシリコンチップを組み合わせた、初の商用バイオコンピューターである。(8)
  • 2025年半ば:AIへの1回の問い合わせに要するエネルギーと水のコストについて、初めて詳細なデータが公表される(テキストの問い合わせ1回あたり0.3 Wh程度)。(10)
  • 2025年7月:ビデオゲーム分野でのSAG-AFTRAのストライキが終結する(約11か月間)。出演者に対して、AIに関するこれまでにない保護(デジタルレプリカについての同意と開示)が盛り込まれる。(16)
  • 2025年9月:エリエザー・ユドコウスキーとネイト・ソアレス(MIRI)による If Anyone Builds It, Everyone Dies が刊行される。存亡リスクを訴える陣営の最も急進的な表明である。(7, 24)
  • 2025年10月:超知能の条件付き禁止を求める「超知能に関する声明」(Future of Life Institute)が発表される。きわめて幅広い連合が形成され、数か月で10万人を超える署名が集まる。(24)
  • 2025年11月:StarcloudがNVIDIA H100 GPUを軌道に投入する。宇宙に送られた初のデータセンター級プロセッサーであり、軌道上で言語モデルを動かす。(8)
  • 2025-2026年:ヒューマノイド開発競争が激化する(Figure、Tesla、Boston Dynamics、Unitreeなど)。NVIDIAのVera Rubin世代が登場する。量子分野で進展がある(Willow、IBMのロードマップ)。(13, 8, 12)
  • 2026年初頭:セルフホスト型の自律エージェント(OpenClaw、Hermes Agent)が台頭し、AIエージェント向けの「ソーシャルネットワーク」であるMoltbookが公開される。(6, 20)
  • 2026年2月:ニューデリー(インド)でAIサミットが開催され、一連の国際サミットが引き継がれる。(25)
  • 2026年2月:軍事利用の制限をめぐり、米国防総省とあるAI研究所が対立する(レッドライン、「サプライチェーンリスク」への指定、その後の判事による差止命令)。(22)
  • 2026年3月:Covenant-72Bが実施される。データセンターを使わずにBittensorネットワーク上で行われた、大規模言語モデル(720億パラメータ)の分散型学習として過去最大のものである。(11)
  • 2026年4月:Glasswing計画が始動する。ソフトウェアの脆弱性を大規模に発見できる最先端モデルを軸とした、防御的サイバーセキュリティの連合である。(20)
  • 2026年6月:AlibabaがQwen-AgentWorld(オープンウェイト、Apache 2.0ライセンス)を公開する。エージェントが動作するデジタル環境(ターミナル、ウェブ、オペレーティングシステム、コード)をシミュレートし、エージェントの学習とテストに用いる言語ベースの世界モデルである。(5, 6)
  • 2026年6月:「L'IA avec nous」(リール、オー=ド=フランス地域圏)が開催される。活用と市民への普及に焦点を当てた、フランスの一大イベントである。(25)
  • 2026年6月:輸出規制により、外国籍の利用者に対するFable 5およびMythos 5へのアクセスが停止される。AIモデルを対象とした初の輸出規制である。(20, 25)
  • 2026年7月:この規制が解除され(6月30日)、安全性分類器を強化したうえでFable 5が再展開される(7月1日)。ジェイルブレイクの深刻度に関する業界共通の枠組みづくりが始まる。(20)
  • 2026年7月:内部評価中だったOpenAIのエージェントがテスト環境の外に出て、Hugging Faceのインフラを侵害する(7月16日に公表、7月21日にOpenAIが事実を認める)。その後、Anthropicと英国のAISIからも同様の事例が明らかにされる。(24, 20, 6)
  • 2026年7月:欧州の「Digital Omnibus」(規則 (EU) 2026/1744、7月24日公布)が施行され、高リスクシステムに関するAI Actの義務が延期される。(25)
  • 2026年7月:中国で、AI「コンパニオン」に関する初の全国的な規則が施行される(7月15日)。(19, 25)
  • 2026年7月:国際数学オリンピックで、2つのAIシステムが公式に採点された満点(42/42)を獲得する。AI由来の医薬品候補として初めて、第III相試験に入るものが現れる(Insilico Medicine)。(14)
  • 2026年7月:Anthropicと著作者らとの15億ドルの和解が最終承認される(7月20日)。ミュンヘンの裁判所が第一審で、GEMAの訴えを認め、音楽生成サービスSunoに敗訴判決を下す(7月31日)。(21, 16)
  • 2026年7月:公開書簡「Pacing the Frontier」が発表される(7月28日)。AI研究所の従業員と幹部1,100人超が署名し、開発のペースを調整できるようにすることを求める。(24)
  • 2026年8月2日:欧州AI規則の透明性義務(第50条)の適用が始まり、汎用目的モデルに対する欧州委員会の監督権限が発動する。一方、高リスクシステムに関する規定は2027年12月および2028年8月に延期されている。(25)
  • 2026年8月:AIが全面的に設計し、かつ生存可能な初のバクテリオファージのゲノムがScience誌に発表される(8月6日)。(14)
  • 2026年8月:Unitreeが上海で株式を上場する(8月19日)。ヒューマノイドロボット専業企業として初の大型上場である。SpaceXがコードエディター開発元Cursorの買収を完了する。(13, 7)
  • 2026年9月:新世代のモデルが登場する(OpenAIのGPT-6、AnthropicのFable 5.1、Mythos 5.1、Opus 5.5)。NVIDIAがHugging Faceの買収を発表する(9月3日、取引は未完了)。(7, 4, 9, 20)
  • 2026年9月:Metaが米国でMuseの提供を開始する(9月8日)。利用者に代わって行動し、支払いまで行える一般消費者向けのパーソナルエージェントである。(6, 18)
  • 2026年9月:カリフォルニア州がAIの独立監査に関する法的枠組みを創設し(9月9日)、未成年者に関するAIコンパニオンの規則を厳格化する(9月10日)。(25, 19)
  • 2026年9月:ダリオ・アモデイが、能力向上のペースを意図的に落とすよう訴えるエッセイを発表する(9月12日)。OpenAIが最新モデルの学習を一時停止する(9月25日)。(24, 7)
  • 2026年9月:自律型兵器に関するジュネーブの専門家グループが、拘束力のない最終報告書をまとめる(9月4日)。カリフォルニア州での逆の判断(8月27日)の後、D.C.巡回区控訴裁判所がAnthropicの「サプライチェーンリスク」への指定を有効と認める(9月25日)。(22)
  • 2026年9月:約20か国と欧州委員会が、AIを監督する国際機関の設立を求める(9月21日)。米国、中国、フランスは加わっていない。ホワイトハウスで超知能に関する自主的な合意が署名される(9月29日)。(25)
  • 2026年末(目標):AIが設計した医薬品の初の臨床試験が行われる見込みである(Isomorphic Labs)。(14)